チョン・ジヨン『死を告げる女』(2022)
原題: 앵커
英題: Anchor
run time: 111
あらすじ
とあるテレビ局の21時台ニュースのキャスターを任されているチョン・セラ (チョン・ウヒ) のもとに、謎の女から「殺されるかもしれないから助けてくれ。仮に自分が死んだとしてもあなたのファンなので死に様を取材してもらえるなら本望」というおかしな電話がかかってくる。
いたずらだと判断して生放送後に帰宅するのだがセラの母親から「いつまで今のポジションに甘んじてるつもりなのか。取材ができる真のキャスターとして認められたいなら今からでも電話相手の家に行ってこい」というようなことを言われ深夜にも関わらず向かうことにする (母親はセラの仕事ぶりにいちいち干渉してくる)。
車を飛ばしてやってきた家に一歩踏み入れると中は水浸しで、浴室ではこどもが、クローゼットの中では電話をしてきた張本人であるユン・ミソと思しき女性が首を吊って死んでいた。
いち早く事件を発見できたのを足がかりに局内での地位を盤石なものにしようと努めるセラだが、次第に幻覚に苛まれ始める。
感想(ネタバレあり)
- 『折れた矢』などの監督とは別人。こちらは1984年生まれの女性。*1
- オチは見ていればすぐ読める。読めるからどうだという話だけど。劇中でネタが割れてからも30分あるのでもう少しタイトにまとめてほしかった。
- サスペンスかと思って見てたらホラーになったりと、ジャンルが不安定なのは韓国映画らしいというか現代映画らしいというか。
- 見終わってみればそこかしこが女性映画だが、エンタメ的な要請に振り回されすぎてちょっと散漫に感じる。でも、このあたりは今どきどんな映画でも難しそうだ。
- 最初の事件が結果的にきっかけくらいの機能しかしていないのはマイナスポイントではないか。
- 職業にニュースキャスターが選ばれている理由は察せられるがもう一声ほしい。もう少し絞殺にはっきり意味を持たせるとか…
- 人物がときおり真っ黒なシルエットとして映されたり、不自然な控室*2や催眠療法時の野原、先に記した水浸しの家などはわりと好もしく感じられたので、この人は辻褄合わせが必要ないものを撮った方がいいんじゃないだろうか。
- でも本人としては社会派でやっていきたいのかな。
- 水浸しはラストへの (演出的な意味での)布石なのだろうが、やはりもう少しうまいことモチーフを連関させてくれればなといったところ。
- 仮に精神疾患の原因を社会に帰すとしても、劇中でそのような人間を犯罪者として出していいのかという問題がある。とうぜん制作側も様々に考えた末の結果だろうが…